「どうしよう……」
机の上に並べた3枚のテスト用紙に目を落とす。目を逸らしたくても逸らせない惨状が、そこに、ある。
今日はテスト最終日。全てのテストが終了したと同時に、初日に受けた分のテストが返却されました。
古文、日本史、数学Ta。
古文は、元から得意だったし、キリノ先輩からコツを教えてもらったのでいつもよりもできました。
日本史は、キリノ先輩の猛特訓のおかげでだいぶ解けました。点数もいつもよりかなり高いです。
数学は――、
「まさか…テスト範囲を間違えるなんて…」
さすがにキリノ先輩にも『テスト範囲を間違えない方法』は教えてもらっていませんでした。
二年生が一年のテスト範囲を知ってるわけ無いですよね…。なんてありがちな!
お約束過ぎてフェルマー先生もびっくりです。
「はぁ、、追試…かぁ」
規定以下の点数の生徒は追試を受けなければいけません。勉強、し直さないといけません。
もしも追試でも悪い点をとってしまうと、1週間は部活禁止で補習授業コースです。
それだけは避けないといけません。
こんなことじゃ、わざわざテスト前の貴重な時間を割いて、自分のテストとは関係ない一年前の授業の内容を思い出して勉強を教えてくれたキリノ先輩に面目が立ちません。そもそも、追試の時点で立つも立たないもないんですが……。あぁ…なんでテスト範囲を間違えるだなんてポカをやっちゃったんだろう…。私のバカバカバカ!!
あぁ! いけない! 何だか思考がマイナス方向へ向かってます!
今は過去を悔いてる場合じゃありません。自分にできることを少しでもこなして追試に臨むべきです。
追試は明日の放課後に行われます。はっきり言って時間がありません。
「また…誰かに勉強教えてもらえないかなぁ…」
日本史などの暗記科目ならともかく、数学は自分で勉強してもよくわかりません。
いつもなら解答欄の間違いなど、ケアレスミスを注意すれば合格点はとれるのですが、
今回は範囲を間違えて勉強してしまったので本当のテスト範囲は殆ど手付かずで大変不安です。
「でも…きっと迷惑…だよね。皆はせっかくテスト終わったばかりなのに」
今日までがテスト期間で部活は休みだとはいえ、開放感溢れる今日は皆さん自分の時間を持ちたいですよね。
それに頼むとしても…誰に頼めばいいんだろう?
キリノ先輩には、二度も手間をかけさせるわけにはいけません。
ダンくんは、…後で宮崎さんの追及が怖いので無理です。お母さん、聡莉は死にたくありません。
「…はぁ」
結局、一人で勉強するしか…
「あれ? 東さんどうしたの?」
でも、クヨクヨしてても始まりませんよね。一人でも頑張ってみることにしましょう。
やると決めたからには頑張ります!
「えっと、…東さん?」
まずは図書室に行きましょう。テストも終わったことだし、今ならきっと空いています。
えーっと、ここから図書室へは…歩いてる方向と全く逆ですね。
というか何で私は廊下を歩き回りながら考え事なんてしてたんでしょうか。
一刻も時間が惜しいです。急いで図書室へ向かわなければ!
華麗にUターンを決めて歩き出…
「東さん?」
「きゃっ!?」
目の前にユージくんがいました。唐突に、いきなり、何の脈絡も無しに。
「えっと、さっきから声掛けてたんだけど気づかなかったかな?」
苦笑交じりにユージ君が言います。
「なんだか難しい顔して廊下を歩き回ってたから…。
何かあったのかなって…。どうかしたの?」
ユージくん? ユージくんがいるじゃないですか! 学年4位のユージくんがいるじゃないですか!
優しくて面倒見の良いユージくんなら、もしかしたら私の勉強に付き合ってくれるかもしれません。
私は今までの経緯をユージくんに話すことにしました。
「はは、確かに…それはキリノ先輩には言いづらいかもね」
ユージくんは、そう言って私の考えに同感した後、「でも、東さんらしいね」と付け足しました。
「私、そんな風に見られてるんですね…」
追試になるのが私らしいのでしょうか。ちょっと凹みます。
「あ、ごめん! えっとそんな悪い意味じゃなくてさ。
うん、上手く言えないんだけど…悪い意味じゃないよ」
邪気の無い笑顔でユージくんが言います。…でも言ってることがよくわかりません。
「で、追試っていつなの?」
ユージくんが私に質問をします。
「え〜っと…明日…なんですけど」
「明日!?」
「それで…もし、よかったら、暇だったらでいいんですけど、勉強を教えて貰えないでしょうか?」
「ん? 別に用事は無いけど、俺でいいの?」
「はい! 是非!」
俺『で』なんてとんでもないです。
「じゃあ早速行こうか。図書室でいい?」
「は、はい」
思ったより簡単に引き受けてもらえました。やっぱりユージくんは面倒見が良いです。
「あっ」
突然ユージくんが何か思い出したように声を上げます。
何か用事を思い出したんでしょうか。
「やっぱり、何か用事があったりしましたか…?」
「あっ、え、いや、用事ってほどじゃないんだけどね。
ちょっと先に図書室行っててもらえるかな?」
「用事があるなら私のことは全然大丈夫ですので! 是非そっちを優先してください!」
「あー、いや、特に約束してるわけじゃないんだけどね。
最近いつもタマちゃんと一緒に帰ってるから、今日ももしかして待ってたりしたら悪いから、
今日は先に帰るように言おうかなって」
初耳です。
「いつも一緒に帰ってるんですか?」
「部活が終わるのも一緒だし、帰り道も途中まで一緒だしね」
「そうなんですか…」
「そういうことだから、俺もすぐに図書室行くから!」
そう言ってユージくんはタマちゃんの教室へ向かっていきます。
「待ってください!」
呼び止めてしまいました。
「私も、行きます!」
一応タマちゃんが先にユージくんと約束があったわけで、それを私のわがままで台無しにしようとしているのだから、
私からタマちゃんに話して許可をもらわないと筋が通りません。そんな風にユージくんに話したら「そんな、約束とかたいそうなものじゃないって」と笑われましたが。
さて、タマちゃんに話をすると言ってしまいましたが何と言えばいいんでしょうか?
タマちゃんの教室へ向かう途中の廊下で考えます。
『今日一日、ユージくんを私に貸してください』辺りですか。
…何かちょっと違う気がしますが。
まぁゆっくり一から説明すればわかってくれるでしょう。
色々と思案している間にもタマちゃんの教室に到着してしまいました。
「あ、タマちゃん」
ユージくんが言います。タマちゃんはちょうど教室から出てくるところでした。
タマちゃんもこちらに気づいたみたいです。
言うなら今です。
……なんだか無意味にドキドキしてきました。
こういうときはドジを起こしやすいのは経験則で知っています。
落ち着かなければ落ち着かなければ。
さっき、ちゃんと言う言葉は考えました。
大きく深呼吸を一つ
今日一日、ユージくんを私に貸してください…
今日一日、ユージくんを私に貸してください…
今日一日、ユージくんを私に貸してください…
…よしっ!
「タマちゃん!」

「ユージくんを、私にくださいっ!!」
壮大にドジってしまいました。
私、告白を通り越してプロポーズしたんですか?
ワイワイと賑わっていた教室前の廊下は、まるで水を打ったように静まり返っています。
――ダッ!
「タマちゃん!」
あぁ!タマちゃんが驚いた顔から一転、私たちに背を向けて走って…というか逃げていきます。
「えと…東さん…今のって…」
振り返ると顔の赤いユージくん。私の顔も彼と同じくらい赤い気がします。
身体が熱いです。心臓がバクバク鳴っています。
「あっ…
【以下の文章は長いため省略されました。
すべてを読むには
樵談日記さんの最新記事に『隊長ったらさいきょーね』とレスして下さい】
とか書いてたらサブちゃんが本当に続きを書いてくれました(笑)
甘ぁ〜い感じですので是非読もうぜ!